【夏の納涼 特別版】浜松の妖怪!波小僧!
【#19 浜松紹介 納涼企画編】
波小僧
静岡の妖怪を涼しさと共に紹介する、納涼企画・其の弐!
今回は浜松の妖怪です。今回もかわいらしいお話ですよ。
助けてもらったお礼に・・・
一つ目小僧や三つ目小僧といった小僧の妖怪は割と有名かと思いますが、波小僧はご存知ですか?
波小僧は遠州七不思議と言われる奇々怪々な物語集に含まれています。
遠州七不思議については後ですこ~しだけ取り上げますね。
さて、波小僧の伝承をお伝えします。
波小僧の伝承は大きく分けて3つほどあります。
一つ一つ紹介していきますね。
※雰囲気を出すため日本昔話風・登場人物の会話は遠州弁にしていますw 市原悦子さんを脳内再生してお楽しみくださいw
其の壱 浜松市西区
昔々、あるところに漁を生業としている漁師たちがおったそうな。
ある日その漁師たちが、天候や雲と波の様子から大量だと予想して海へ出た。
しかし、どうしたことか1匹も魚が取れなんだ。
「こりゃどうしただぃ。こんなことは初めてだやぁ。こんな日は、はぁ家へ帰るだ。」
海へ最後のひと網を入れ、手繰り寄せると見たことのない気味の悪い生き物が引っ掛かった。
「やい、お前か!不漁の原因は!」
怒った漁師たちは、その生き物に殴りかかろうとせまった。
するとその生き物は小僧の姿へと変わり、こう言った。
「どうか命だけはお助けください。助けていただいたら、お礼にこれから海が荒れる時は太鼓を叩いて知らせます。」
漁師たちはたまげたが、その小僧の姿となった生き物を信じて海へ帰してやった。
それからというもの、波の音に聞こえる小僧の鳴らす太鼓の音が南東から聞こえたら雨や嵐、南西から聞こえたら晴れということが分かり、大漁が続いたそうな・・・。
其の弐 浜松市中区
昔々、ある男の子が田植えをしておったそうな。
そのとき、どこからともなく親指ほどの大きさの波小僧が現れた。
そして波小僧は海へ帰してほしいと男の子へ頼んだ。
聞けば、波小僧は大雨が続いたので陸に上がって遊んでいたが、急に日照りが続いたため海へ帰れなくなってしまったんじゃと。
男の子は波小僧を海まで連れて行き、波小僧は無事海へ帰って行った。
数日後、干ばつで作物が取れんようになり男の子は浜辺で途方にくれておった。
すると、この前の波小僧が突然現れてこう言った。
「オラのおっとうは雨ごいの名人だで、雨降らせてやるだ。波の響きが南東から聞こえたら雨が降るで。覚えといてね」
すると、波の音が変わり土砂降りの雨が降り始め、干ばつの被害が治まったそうな・・・。
其の参 遠州灘
昔々、あるところに坊さまがおったそうな。
その坊さまは年老いたおっかあが元気になるようにと、念を込めて2つの藁人形を作り田植えをさせたそうな。
その藁人形が田植えを終えたあと、坊さまは藁人形に読経を聞かせてからこう言った。
「これから雨や風で災害が起きるようなら、必ず人々に知らせておくれ。」
その後、坊さまはその2つの藁人形を川へ流したそうな。
その片方の藁人形は、海へ流れつき漁師が仕掛けておった網に引っかかってしもうた。
網を仕掛けた漁師が、その網を引き上げるとなんと波小僧が引っ掛かっておったそうな。
波小僧が命乞いをしながら、助けてくれたら波の音で天候を知らせると言いおった。
漁師が波小僧を開放してやると、海の向こうへと帰っていった。
それからというもの、「雷三里、波千里」(一説には波七里)ということわざがうまれ、漁師たちは波の響きが南東から聞こえれば雨、南西から聞こえれば晴れと知ることができるようになったそうな・・・。
さて、いかがでしたでしょうか、3つの伝承。
どの伝承も困っている波小僧を助けたらお礼に波の響きの音で天気を知らせてくれる、というのがベースになっていますね。
実際に、遠州地方の海は白砂青松の海岸が長く続いていて、高くなった波の音が反響して南風にのり、遠くの山あいまで響くという自然現象が発生するとのことです。
実際に自然現象があるということと、こんな伝承が伝えられているのはとってもステキなことですね。
ちなみに、「雷三里、波千里」という言葉は、今回お話した遠州灘に伝わる、地鳴りに似た独特の波の響きの事を指します。
昔の人たちは波の響きでその日の漁の取れ具合を予想できたそうです。
伝承其の壱のお話の冒頭で少し出てきますね。
波小僧の姿
網にかかってしまったり、陸に上がってたら帰れなくなってしまったりと少しおっちょこちょいなところのある波小僧ですが、どんな見た目なのか気になりますよね?
ここでは3つの画像を紹介します。
〖壱〗
こちらは、浜松市西区の舞阪宿末並木公演に設置されている波小僧の石造です。
色合いが木製のように見えますが、石造との事。
表情と色合いがあいまって、とってもかわいらしい像ですね。
〖弐〗
こちらも石造ですね。
撮られている角度のせいもあるのかもしれませんが、〖壱〗の像とは違って若干小僧っぽさが薄まっているような気がしますw
漁師さん、と言われても違和感ない・・・?w
〖おまけ〗
こちらの像は鳥取県境港市・水木しげるロードに設置されている銅像です。
静岡県、しいては浜松市からは離れてしまいましたが鳥取県にも波小僧の像があるということだったので、せっかくなのでご紹介。
この像は、頭と目が大きくぎょろっとしていて不気味ですね。
「ザ・妖怪・・・っ!」って感じの雰囲気です。
錬金術を使える兄弟のアニメにでてくるホムンクルスのエンヴィが一瞬頭に浮かびましたw
静岡県の波小僧とはまた違った印象ですね。
お気に入りの波小僧はいましたか?
私は〖壱〗の波小僧がかわいくて好きですね。
遠州七不思議
今回の記事の最初の方に取り上げた遠州七不思議。
言われているのは次の7つです。
この納涼企画で取り上げる予定ですので、お楽しみに!
- 桜ヶ池のお櫃納め
- 京丸牡丹
- 片葉のアシ
- 小夜の中山夜泣き石
- 三度栗
- 波の音(☚今回の波小僧はここに含まれます)
- 無間の鐘
- 池の平の幻の池
- 子うまれ石
- 天狗の火
- 能満寺のソテツ
- 柳井戸
- 晴明塚
あれ?7つ以上ありますね・・・。
おかしいな~、おかしいな~。
怖いな~、怖いな~。(某〇川淳二風)
そうなんです、遠州七不思議は諸説あり組み合わせが違う場合があるようです。
七不思議が七つじゃない場合って他にも聞いたことがあるのですが、七つで収めきれないなら「七不思議」じゃなくて「八不思議」とか「十不思議」って言っちゃってもいいような気がしますが・・・w
七不思議だとなんとなく言葉の響きがいいからですかね?
七はラッキーセブンですし、トランプカードなども7が強い役を作ったり、7枚で1セットなんていう場合もありますし、不思議な力があるのかも・・・?
最後に
いかがでしたでしょうか。
遠州地方七不思議のひとつ波小僧。
かわいらしい小僧のお話でした。
静岡県の海に遊びに行ったら、もしかしたら波小僧に会えるかもしませんよw
ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。